(参考)代表的な消化管ホルモン 【独学用 管理栄養士による栄養学解説】

独学

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生命を維持していくためには身体の機能を働かせることが必要です。

ひとには、その身体機能を制御するシステムが整っており、そのうちのひとつが生理活性物質であるホルモンです。

ホルモンには様々な種類があり、

ホルモンによって作用は異なり、機能をより働かせたり、反対に機能を抑えたりすることもあります。

今回はホルモンのうち、摂食に関わる代表的な「消化管ホルモン」について紹介します。

消化管ホルモンの特徴

 

「食べ物を摂る」ことが分泌の起因

消化管ホルモンは、消化管にある細胞で産生され分泌されるホルモンの総称です。

 

主に食事を摂ったという物理的な刺激や、食べ物を消化することによる刺激、また栄養を吸収することによる刺激など、

「食べ物を摂る」ことが起因となって分泌されます。

 

消化管ホルモンはそれぞれの種類によって分泌される消化管や、役割が異なりますが、

主に消化管や膵臓、肝臓、胆のうなどに作用し、消化吸収の機能を制御したり、栄養を吸収した後の代謝を調整したりする役割があります。

相互作用をもつ

消化管ホルモン同士の作用が重複していくことが多く互いに作用を補っているものや、

反対の作用を持っている消化管ホルモンが相手の消化管ホルモンの作用を調整するものもあり、

いわゆる相互作用をもつ特徴があります。

 

例えば、十二指腸で分泌するセクレチンは胃酸を中和するための重曹分泌をおこなうますが、微力ながら膵臓に働きかけて消化液を分泌させます。

一方で、同じ十二指腸で分泌するコレシストキニンは主な作用として膵臓の消化液分泌を促進する作用がありますが、胃酸を中和する重曹分 泌も少しおこなっています。

 

また、消化管ホルモンが他の消化管ホルモンの分泌を調整する例として、

セクレチンの作用として、胃から分泌されるガストリンの分泌を抑制する作用が有名です。

自律神経が関わる

消化管ホルモンの分泌は自律神経の存在が欠かせません。

例えば、ガストリンは食塊を胃で消化するために胃酸を分泌される働きがありますが、

ガストリンの分泌自体を指令するのは自律神経のひとつである迷走神経が担っています。

 

このように食事を摂ったことを起因に自律神経が働き、ガストリンの分泌をコントロールしています。

 

また、消化管ホルモンの作用においても自律神経の制御が働いています。

十二指腸では胃から送られた食塊を消化します。このとき、十二指腸を取り巻く迷走神経が消化の調整を担っています。

 

このように、消化管ホルモンの分泌や作用は自律神経の支配がかかっています。

 

代表的な消化管ホルモン

①「消化」に関わる消化管ホルモン

 

「消化」に関わる主な消化管ホルモンについては以下でまとめています。

 

こちらでは概要のみ解説します。

 

(1)ガストリン

ガストリンは胃から分泌され、主に胃酸の分泌を促し胃での消化を助けます。

 

(2)コレシストキニン

コレシストキニンは十二指腸から分泌され、主に膵臓から消化液を分泌させたり、胆のうを 収縮させます。

また脳においても分泌され、摂食の調整を担っています。

 

(3)セクレチン

セクレチンは十二指腸から分泌され、主にガストリンの分泌を抑制し胃酸の分泌を減少させます。

また膵臓に作用し消化液の分泌を行う働きもあります。

 

(4)GIP

GIPは胃酸分泌抑制ペプチドとも言われており、胃酸の分泌を抑える働きがあります。

 

②「食欲」に関わる消化管ホルモン

(1)グレリン

グレリンは、食欲を高めて食事を摂ることを促す消化管ホルモンです。

 

グレリンは胃で生成され、空腹を感じると分泌されます。分泌されたグレリンを迷走神経が受け取り、摂食を促す中枢に信号を伝達します。

摂食中枢はグレリン分泌の信号を受け取ると食欲を高めて食事を摂るよう促します。

 

また、グレリンは胃酸の分泌をしたり消化管の運動を制御したりと消化を助ける役割もあります。

 

その他に、糖質や脂質の代謝を促したり、成長ホルモンを分泌させたりして、

空腹時のエネルギー調整に関与しています。

このように、グレリンは身体のエネルギー源が不足しないように、

「食事を摂るよう促す」、「消化を高めて多くのエネルギーを吸収できるようにする」、「身体内のエネルギー調整を行う」働きがあります。

 

(2)レプチン

レプチンはグレリンとは反対の作用で、食欲を抑えて食事を摂らないように促す消化管ホルモンです。

 

レプチンは胃や白色脂肪細胞で生成され、食事を摂ったことを起因に分泌されます。

レプチンが分泌されると、グレリンと同様に迷走神経がレプチンを受け取り、摂食中枢に信号を送ります。

レプチン分泌の信号を受け取った摂食中枢は、食欲を低下させて食事を摂らないよに働きます。

 

また、レプチンにはグレリンの反対として身体のエネルギー消費を増加させる作用もあります。

 

(3)ニューロテンシン

ニューロテンシンもレプチンと同様に食事を摂らないように促す消化管ホルモンです。

 

ニューロテンシンは小腸下部の回腸にあるN細胞という細胞で生成されています。

食事を摂ることに起因して分泌されますが、脂肪の摂取によってより分泌されます。

 

また、ニューロテンシンは膵臓や胆のうからの消化液の分泌を促したり、消化管の運動を調整したりする作用もあります。

  

③その他の代表的な消化管ホルモン

(1)インクレチン

インクレチンとは、食事を摂ることを起因にインスリン(血糖値を下げるホルモン)の分泌を促す消化管ホルモンです。

 

食事を摂ると、消化吸収を経て糖が血液の中に送られ、血液中の糖の濃度が高くなります。

糖は身体のエネルギー源となるので、その糖を脳や筋肉など身体の必要な組織に分配するためにインスリンというホルモンが働きます。

インスリンが働くと、血液中の糖が各組織に送られるので、血液中の糖の量が少なくなります。このことを血糖値が下がると言います。

 

インクレチンはそのインスリンの分泌を促します。

これは食事を摂ったことを感知して、「これから食事を消化吸収するので血液中の糖の濃度(血糖値)が上がります。インスリンは分泌して糖を各組織に分配してください。」というようにインスリンに働きかけるためです。

   

インクレチンにはGIP(Gastric Inhibitory Polypeptide)とGLP-1 (Glucagon-Like Peptide-1)の2つの種類があります。

 

[1]GIP

GIPは食事を摂ったことを起因に、主に十二指腸のK細胞から分泌されます。

 

GIPはインスリンの分泌を促す他、脂肪細胞(脂肪を多く摂り込み蓄積する役割を担う細胞)に働きかけ、脂肪細胞へ血液中の糖を取り込む作用もあります。

脂肪細胞へ糖を送ることで血糖値が下がります。

 

よって、GIPはエネルギーの蓄積のために血液中の糖をエネルギー蓄積に利用する働きがあります。

 

[2]GLP-1

GLP-1は主に胃や下部小腸、大腸にあるL細胞から分泌されます。

GLP-1はインスリンの分泌を促す他、食欲を低下させる働きがあります。

 

これは食欲を低下させることで、食事の摂取量を減らし血糖値を上げないようにするためと考えられています。

 

(2)ソマトスタチン

ソマトスタチンは胃や十二指腸、空腸、膵臓から分泌される消化管ホルモンです。

また、脳の視床下部という部位からも分泌されます。

 

ソマトスタチンはガストリンやセクレチンなどの消化管ホルモンの分泌を抑える働きがあります。

 

また、インスリンやグルカゴン(血糖値を上げるホルモン)、成長ホルモンの分泌も抑える働きがあり、

いろいろなホルモンの制御に関わっています。

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