第38回 管理栄養士国家試験
次の文を読み「174」、「175」に答えよ。
Kクリニックに勤務する管理栄養士である。
大学 2 年生の学生がクリニックを受診してきた。学生は、20 歳、女性。中学生の時から新体操部に所属している。審美系スポーツでは、体型が重要と考えており、食事摂取を常に控えるようにしてきた。最近、普段の生活において、立ちくらみや息切れ等の症状がみられた。鉄欠乏性貧血と診断され、鉄剤投与を受けた。 1 日の食事内容は、表のとおりである。
身長 160 cm、体重 45 kg、BMI 17.6 kg/m2。
174
薬物治療により、症状は改善してきた。この学生に栄養食事指導を行うことになった。指導方針として、最も適切なのはどれか。 1 つ選べ。
(1) エネルギー摂取量を増やす。
(2) たんぱく質摂取量を増やす。
(3) 鉄摂取量を増やす。
(4) 水分摂取量を増やす。
175
栄養食事指導の結果、体重は 1.5 kg 増加し、体調が悪い日はなくなり、パフォーマンスが向上してきたと感じていた。この学生から「どうしても選手に選ばれたい。これ以上、体重は増やしたくない。」と相談があった。助言として、最も適切なのはどれか。 1 つ選べ。
(1) 体重が増えないように、練習量を増やしましょう。
(2) 体調不良が改善したので、食事指導は終わりにしましょう。
(3) パフォーマンスも良くなったと感じているのですね。もう少し今の食事を続けてみましょう。
(4) もう少し体重を増やしたほうが、表現力も上がると思いますよ。
正解:174:(1) 175:(3)
〔解説〕
この問題は対象者の現状や食事内容から適切な栄養食事指導方針の問い、また栄養指導における管理栄養士の心構えや対象者への応答姿勢についての問いです。
174
対象者の現状から、鉄欠乏性貧血に対する治療は薬物療法で実施され良好に経過していることがわかります。そこで対象者の年齢、性別、BMI等、また「食事摂取を常に控えるようにしてきた」との問題文を踏まえ、食事内容を見ると必要栄養量に満たないことが考えられます。
※日本人の食事摂取基準(2020 年版) 18~29(歳)女性 身体活動レベルⅡ:2,000kcal、身体活動レベルⅢ:2,300kcal
このことから、食事内容の改善に繋がる(1)および(2)が適切と考えられます。このうち、食事内容を詳細に見ると、たんぱく質という特定の栄養素が不足しているというよりも、全体の食事量そのものが不足していることから、まずはエネルギー量の増加を指す(1)が最も適切です。
(2)は、ヨーグルトやサラダチキン、納豆、ひき肉あんかけといったたんぱく質を多く含む料理を摂っていることからも、たんぱく質不足よりもエネルギー不足から改善することが最も適切と考えられます。
(3)は、問題文に「薬物治療により、症状は改善してきた。」とあるため不適です。
(4)は、水分不足が問題となっている記述がないため最も最適なとは言えません。
175
問題文から食事改善の実施により体重の増加と体調の改善が見られ、経過良好であることがわかります。また対象者から体重の増加を抑えたい要望がありますが、目標的な体重には現状至っていない(体重45kg→45.5kg BMI 17.6 kg/m2→17.8 kg/m2)ため、体重の低下や体調の悪化リスクを考慮して、少なくとも食事量の維持が望ましいです。
このことから、対象者の経過を肯定的に評価している「パフォーマンスも良くなったと感じているのですね。」という言葉があり、また食事量の維持を推奨している(3)が最も適切です。
(1)は、練習量に着目しており栄養食事指導として不適です。
(2)は、対象者の状況から引き続き支援が必要であるにもかかわらず栄養食事指導の終了を述べており不適です。
(4)は、対象者の要望を否定的に捉え体重増加を促す発言であり不適です。