今回はたんぱく質を構成する材料となる物質のアミノ酸について解説します。
アミノ酸は多くの種類があり、覚えることが多いように思われますが、まずはアミノ酸の特徴やどのような名前のものがあるかを知ることから始めましょう。
アミノ酸とは
アミノ酸とは窒素と水素からなるアミノ基(NH2)と炭素、酸素、水素からなるカルボキシル基(COOH)が結合している化合物のことです。
アミノ酸によって図の「R」のところが変化します。
アミノ基とカルボキシル基が結合することをペプチド結合といいます。
このペプチド結合が連なっていきアミノ酸が集合体を構成していくことでたんぱく質ができます。
ひとに必要なアミノ酸は20種類
ひとは必要なアミノ酸のうちひとつでも失うと身体のたんぱく質を作ることができず、生命を維持していくことができません。
ひとに必要なアミノ酸は20種類と言われています。以下ひとつずつ見ていきましょう。
アラニン | 結合組織を作る材料となる エネルギー源に変わる 免疫に関与する |
グリシン | 他のアミノ酸の合成やエネルギー、ホルモンの合成を助ける ヘモグロビンの材料となる 鎮静作用がある |
チロシン | 神経伝達物質やホルモンの材料となる 気分を高める効果がある |
フェニルアラニン | フェニルアラニンが変化してチロシンになる コラーゲンの材料となる 気分を高める効果がある |
セリン | 神経の機能を助ける エネルギー合成に使われる 免疫系に働き抗体を作る |
システイン | 結合組織の材料となる 抗酸化作用や損傷の回復を促進する 免疫に作用し白血球を活性させる |
ヒスチジン | 赤血球、白血球の形成に使われる |
プロリン | コラーゲン、結合組織、筋肉の主な材料となる |
バリン | 神経伝達物質の作用を助ける 分岐鎖アミノ酸のひとつ |
ロイシン | 筋肉のたんぱく質分解を抑える 骨組織の回復を促進する 分岐鎖アミノ酸のひとつ |
イソロイシン | ヘモグロビンの形成に使われる 分岐鎖アミノ酸のひとつ |
メチオニン | 肝臓の解毒作用に関与する |
スレオニン | 肝臓の解毒作用に関与する コラーゲンの材料となる |
リジン | 免疫に働き、ウイルスの活性を抑える 筋肉の疲労を抑える コラーゲンや骨の形成に働く |
トリプトファン | 鎮静作用成分の材料となる 成長ホルモンの分泌を促す |
アルギニン | 血糖値に関与するホルモンや成長ホルモンの分泌を促す コラーゲンの生成を促す |
アスパラギン | アスパラギン酸に変化する |
アスパラギン酸 | 免疫に作用する エネルギー生成に使われる |
グルタミン | 脳のエネルギー源となり脳の働きを助ける 免疫に作用する |
グルタミン酸 | 他のアミノ酸の代謝に使われる うま味調味料として使用されている |
必須アミノ酸
20種類のアミノ酸のうち、他のアミノ酸を使って身体内で合成することができるものと、身体内で合成することができず必ず身体の外から食事などを通じて摂る必要があります。
このようなアミノ酸を「必須アミノ酸」と呼びます。
必須アミノ酸は以下の9種類です。
- ふ・・・フェニルアラニン
- ろ・・・ロイシン
- ば・・・バリン
- い・・・イソロイシン
- す・・・スレオニン(トレオニン)
- ひ・・・ヒスチジン
- と・・・トリプトファン
- りじ・・・リジ ン
- め・・・メチオニン
必須アミノ酸は有名な覚え方があります。
それぞれの頭文字を並べたゴロで「風呂場イス独り占め(ふろばいすひとりじめ)」と覚えておきましょう。
分岐鎖アミノ酸(BCAA)
20種類のアミノ酸のうち、バリン、ロイシン、イソロイシンの3つを分岐鎖アミノ酸と呼びます。
分岐鎖アミノ酸はアミノ酸の中でも筋肉に積極的に取り込まれ、骨格筋のたんぱく質を構成する特徴があります。
トレーニング後に摂るプロテイン飲料等に分岐鎖アミノ酸が多く含まれるのはこのためです。
(補足)アミノ酸価(アミノ酸スコア)
前回、動物性たんぱく質のほうが植物性たんぱく質よりも質の高いたんぱく質であると紹介しましたが、このことは「アミノ酸価」という指標を用いて説明されます。
アミノ酸価とはそのたんぱく質がどの程度栄養的価値を有しているかを示す指標です。
各食品の必須アミノ酸組成をアミノ酸評点パターンという基準で割ったものに100をかけて計算します。
「各食品の必須アミノ酸組成」÷「アミノ酸評点パターン」× 100
数字が大きいほど栄養的価値が高いことを意味します。
食品のアミノ酸価(1985)の例をみてみましょう。
- 牛肉・・・100
- さんま・・・100
- 卵・・・100
- 米・・・61
- 小麦・・・39
- 大豆・・・100
このように肉や魚、卵といった動物性の食品はアミノ酸価が高く、米や小麦といった植物性の食品はアミノ酸価が低い特徴があります。
つまり、動物性たんぱく質のほうがより栄養価の高い(質の高い)たんぱく質であると言えます。
(コラム)なぜ食品によってアミノ酸価が異なるのか。
アミノ酸価が食品によって異なる理由は、食品によってたんぱく質を構成するアミノ酸の種類が異なることで、食品を摂りたんぱく質を身体で利用するときに、ある「制限」がかかるためです。
板を組み合わせてできた樽を例にすると、どれかひとつの板でも小さいとその樽で水を溜めるときに、その小さい板の高さまでしか水を溜めることができません。
このように食品に含まれるたんぱく質を構成する必須アミノ酸のうち、どれかの必須アミノ酸が少ないと、そのもっとも少ない必須アミノ酸の分だけしか栄養的な価値が発揮できません。
動物性の食品は必須アミノ酸がどれも多く含まれているためアミノ酸価が高くなり、どの必須アミノ酸もしっかりと栄養的価値を発揮するので質の高いたんぱく質です。
また、植物性の食品はアミノ酸価が低い分、他の食品と併せて摂り不足するアミノ酸を補うようにしましょう。
ちなみに少ない必須アミノ酸を制限アミノ酸といい、もっとも少ない必須アミノ酸を第一制限アミノ酸といいます。
(補足)アミノ酸インバランス
複数の食品を併せて摂ることでそれぞれ不足するアミノ酸を補い、より効果的にアミノ酸を身体で活用することができます(アミノ酸の補足効果)。
一方で不足するアミノ酸が複数ある場合、そのうちひとつのアミノ酸だけを補うとかえって全体のアミノ酸の作用効率を下げてしまうことがあります。これをアミノ酸インバランスと呼びます。
これはいろいろなアミノ酸が身体内でお互いに関係しながら代謝される背景から、ひとつのアミノ酸だけ補うとかえって他のアミノ酸の必要な量が増えてしまい、代謝が十分に回らなくなってしまうためです。
不足するアミノ酸をサプリメント等で補うときはアミノ酸インバランスにならないよう注意が必要です。
たんぱく質の材料とならないアミノ酸
アミノ酸のなかには、たんぱく質を構成する材料とはならず、単独で身体に作用するものもあります。
特に主要なアミノ酸をいくつか紹介します。
テアニン | 緑茶に含まれるうま味成分 |
γ-アミノ酪酸 | 抑制性の神経伝達物質気持ちを落ち着かせリラックスさせる作用がある |
オルニチン | 身体内の毒素を処理する尿路回路に必要 |
シトルリン | 身体内の毒素を処理する尿路回路に必要 |
クレアチン | 心臓・骨格筋を動かすことに使われる |
まとめ
○アミノ酸はアミノ基とカルボキシル基からなる化合物のこと。
○アミノ酸どうしがペプチド結合して連なっていきアミノ酸が集合体を構成していくことでたんぱく質ができる。
○ひとに必要なアミノ酸は20種類、そのうち9種類が必須アミノ酸。
以上アミノ酸を紹介しました。
次回はタンパク質の構造について解説します。