「低栄養が心配の家族のためにどのような食事を提供すればいいですか」
高齢者にとって低栄養が予後に及ぼす影響が大きな負の影響であることが社会的に問題となっている一方で、高齢の家族のために、自宅で低栄養予防に向けた食事を摂ることの重要性も認知が進んでおり、管理栄養士全体としても自宅での低栄養予防に取り組んでいます。
ここでは、家族ができる内容の高齢者の低栄養予防に向けた食事の進め方を紹介しています。
詳細のリンクをつけているところも読んでいただくとより進めやすいのでご参考ください。
高齢者の低栄養予防に向けた食事の進め方6ステップ
低栄養を予防するための食事はA-PDCAサイクルに基づいて進めていきます。
食事の進め方は以下の通りです。
- 今の栄養状態を評価する
- 食事内容を決める実行
- 3つの食習慣をつけながら食事を摂る
- 定期的に栄養状態をチェックする
- 食事内容を見直しする
- 3~5をくり返す
具体的に流れを紹介していきます。
ステップ① 今の栄養状態を評価する
まずは、自分や高齢の家族について、今の栄養状態が良好なのか、低栄養の可能性が高いかを評価します。
これは、低栄養リスクの程度に合わせて最適な食事を摂ることでより低栄養を効果的に予防・改善するためです。
栄養状態を評価するには病院などで健康診断を受けたり血液検査をしたりする方法もありますが、
実際に臨床現場で使用されているものから、ご家庭でできる高齢者向きの栄養状態の評価ツールであるMNA®を使用すると簡便でわかりやすいです。
MNA®の使い方は以下のページで紹介しているので、まずはこちらを参考に今の栄養状態を評価します。
ステップ② 食事内容を決める
栄養状態を評価したら、次に低栄養予防のための食事内容を決めていきます。
食事内容は低栄養リスクに合わせたものにします。
低栄養リスクが低い場合は自分の適切な栄養を摂り、低栄養を予防するための食事内容にします。
また、低栄養リスクが高ければ、低栄養の予防・改善のために早急に必要なエネルギー、たんぱく質を確保し、低栄養リスクを下げる食事内容とします。
実際になにをどれくらい食べる食事にするのか、低栄養リスク別の具体的な食事内容は以下のページにて解説していますのでご参考いただき食事内容を決定してください。
ステップ③ 3つの食習慣をつけながら食事を摂る
食事内容を決定したら、実際に食事を摂っていきます。
これから食事を摂りながら、合わせて3つの食習慣をつけるようにします。
3つの食習慣とは「毎回ごはんを量ること」、「体重を測ること」、「毎日3食食べること」です。
この食習慣をつけておくことで、次のステップの定期的に栄養状態をチェックすることにつながるのでぜひ意識してほしいです。
3つの食習慣の具体的な内容や、どのように栄養状態のチェックに反映させるかは以下のページで紹介していますので、未読の方はご確認いただけたらと思います。
ステップ④ 定期的に栄養状態をチェックする
低栄養のための食事を摂り、3つの食習慣をおこなっていきながら、定期的に栄養状態をチェックします。
栄養状態のチェックは、
- (1)ステップ①で使用したものと同じ指標を使用してチェックする
- (2)3つの食習慣の実施状況をチェックする
これらをできれば1か月に1回、少なくても3か月に1回は実施します。
ステップ①でMNA®を使用した場合は、ここでもMNA®を使用して栄養状態をチェックしましょう。
同じ指標を使うことで、基準をそろえて栄養状態の変化をみることができます。
また、3つの食習慣を振り返り、「量って盛ったご飯を残してしまうことが増えた」「体重が減った」「食事を欠食することがある」のうちどれかが当てはまるかを確認します。
ステップ⑤ 食事内容を見直しする
定期的な栄養状態の評価で、
- 「低栄養のリスクが以前より高いと判定された」
- 「3つの食習慣の実施状況を振り返り当てはまることがひとつ以上あった」
このうちどちらかでも該当したら食事内容を見直し低栄養リスクに適した食事に調整します。
何も該当しなかったら次回の栄養状態のチェックまで今の食事を続けます。
食事内容の見直しは以下のように行います。
「低栄養のリスクが以前より高いと判定された」場合
低栄養の予防と改善のために、早急なエネルギー、たんぱく質摂取に重点を置きます。
食事を十分に摂ることを意識し、2割程度全体の食事量を増やします。
また、食事を今より多く摂ることが難しい場合は、栄養補助食品を活用します。
以下のページに具体的な栄養補助食品のメニューを紹介しているので、こちらを参考に1日400kcal程度の摂取増加をおこないましょう。
この食事を2週間から1か月続け、再度栄養状態をチェックします。
低栄養リスクが変わらず栄養状態が改善されなかったら栄養補助食品を200kcal分追加しこの食事を継続し、再度2週間から1か月後に栄養状態をチェックする、これをくり返します。
低栄養リスクが低下し栄養状態が改善されたらフレイル予防のための食事に戻します。
「3つの食習慣の実施状況を振り返り当てはまることがひとつ以上あった」場合
この場合は食事量が減った原因に合った対応をおこないます。
以下のページを参考に原因にあわせた必要栄養量の確保の方法をとってください。
1か月後に再度栄養状態をチェックし、改善されなければ原因に合った対応を継続します。
改善されればフレイル予防のための食事に戻します。
ステップ⑥ ステップ③から⑤を継続する。
あとはステップ③から⑤の、
「3つの食習慣をつけながら食事を摂る」⇒「定期的に栄養状態をチェックする」⇒「食事内容を見直しする」をくり返します。
このように状態にあった食事を摂れるように、自分の低栄養のリスクを指標に食事を調整する食事が、高齢者におすすめの食事の進め方です。
管理栄養士はA-PDCAサイクルを使って栄養管理をしている
ご紹介した食事の進め方にはA-PDCAサイクルを活用した方法です。
実際に臨床や介護現場の管理栄養士は、A-PDCAサイクルを使って栄養管理をおこなっています。
状態は時間とともに変化するもので、食事の必要なことも変化していきます。
特に高齢の方は状態の変化が早く、急激に変わることもあるので、定期的な栄養状態のチェックと、低栄養のリスクにあった食事を摂ることが低栄養予防に欠かせません。
管理栄養士は低栄養のリスクが高いことを早めに把握し、いかに低栄養を予防・改善し健康を保つことができるかを目標に栄養管理をおこないます。
これはご家庭で生活される方でも同じく重要なことですので、今回紹介した食事の進め方をぜひ参考にしていただきたいです。
まとめ
○高齢者の低栄養予防のための食事の進め方はA-PDCAサイクルを活用した方法でおこなう。
○高齢の方は特に状態の変化が早いため、「低栄養リスクの早期把握」と「状態にあった食事」が低栄養予防と改善に欠かせない。
以上、「高齢者の低栄養予防のために家族ができる食事の進め方」について紹介しました。
低栄養予防はこれからの健康を維持するためにとても重要です。ぜひご参考ください。