脂肪酸 【独学用 管理栄養士による栄養学解説】

独学

栄養学の脂質を勉強する上で、脂肪酸について詳しく理解しておくことが欠かせません。

その脂肪酸ですが、種類がたくさんありますので、ひとつひとつ丁寧に勉強しておくことでより脂質の栄養学的な意義を理解することに繋がります。

ここでは脂肪酸の種類を中心に解説しています。

様々な名前が出てきますので違いを意識して見てみてください。

 

 

脂肪酸とは炭化水素が直鎖状に結合している物質

 

脂肪酸とは、炭化水素が直列で鎖状に複数繋がっており、末尾にカルボキシル基という分子が結合している物質です。

脂肪酸は身体のエネルギー源として利用されたり、身体の細胞膜を構成したりする役割を持っており、脂肪の栄養学的役割において重要な働きを担っています。

また、脂肪酸は脂質を分解すると遊離することで生成され、身体内で利用されます。

 

繋がっている炭化水素は、脂質の分解の影響で偶数個単位で繋がっています。

最大で炭化水素が36個繋がっており、その長さによって「短鎖脂肪酸」、「中鎖脂肪酸」、「長鎖脂肪酸」と名前が分けられます。

  • 短鎖脂肪酸・・・炭化水素が4個以下
  • 中鎖脂肪酸・・・炭化水素が6~10個
  • 長鎖脂肪酸・・・炭化水素が12個以上

 

 

脂肪酸の種類

 

脂肪酸は炭化水素どうしの繋がり方によって「飽和脂肪酸」、「一価不飽和脂肪酸」、「多価不飽和脂肪酸」に分類されます。

詳しくは、炭化水素どうしの結合に二重結合(不飽和結合)があるかで分類されます。

  • 飽和脂肪酸・・・二重結合がない脂肪酸
  • 一価不飽和脂肪酸・・・二重結合が1つある脂肪酸
  • 多価不飽和脂肪酸・・・二重結合が2つ以上ある脂肪酸

           

また、脂肪酸の表記に「C18:0」というものがあります。

「C18:0」は炭化水素が18個繋がっており、二重結合が0個

「C22:6」は炭化水素が22個繋がっており、二重結合が6個

という意味です。

ちなみに、「C18:0」はステアリン酸という脂肪酸、「C22:6」はドコサヘキサエン酸(DHA)という脂肪酸を指します。

 

①飽和脂肪酸

飽和脂肪酸は炭化水素の列の中に二重結合が存在しない脂肪酸です。

主に動物性の脂質であるバターやラード、植物性油などに多く含まれます。

 

飽和脂肪酸の代表的な種類としては、動物性脂質も植物性脂質もパルミチン酸ステアリン酸という脂肪酸が最も多く含まれています。

また、バターなどの乳脂にはラウリン酸酪酸という脂肪酸などがあります。

 

飽和脂肪酸の例

パルミチン酸(C16:0)ステアリン酸(C18:0)動物性油や植物性油に多く含まれる長鎖の飽和脂肪酸食事で摂る飽和脂肪酸のほんとどがパルミチン酸とステアリン酸
ラウリン酸(C12:0)酪酸(C4:0)飽和脂肪酸のうち短鎖、中鎖のものバター、やし油に含まれる

 

②一価不飽和脂肪酸

一価不飽和脂肪酸は炭化水素の列の中に二重結合が1つ存在する脂肪酸です。

食事から摂る一価不飽和脂肪酸は、ほとんどがオリーブオイルなど植物性脂質に含まれるオレイン酸です。

また、少量ですがパルミトオレイン酸という脂肪酸も植物性脂質に含まれます。

 

オレイン酸やパルミトオレイン酸は食事から摂ることで身体に吸収され利用される他、

飽和脂肪酸であるパルミチン酸からパルミトオレイン酸が、ステアリン酸からオレイン酸が身体内で合成されます。

 

一価不飽和脂肪酸の例

パルミトオレイン酸(C16:1)植物油にわずかに含まれる身体内でパルミチン酸から生成される
オレイン酸(C18:1)食事から摂る一価不飽和脂肪酸のほとんどがオレイン酸オリーブオイルから発見されたためオレイン酸と呼ばれている身体内でステアリン酸から生成される

 

③多価不飽和脂肪酸

多価不飽和脂肪酸は炭化水素の列の中に二重結合が2つ以上存在しする脂肪酸です。

多価不飽和脂肪酸にも2種類があり、二重結合がどこにあるかで「n-6系脂肪酸」と「 n-3系脂肪酸」に分けられます。

なお、n-6は炭化水素の6番目に最初の二重結合があることを、n-3は炭化水素の3番目に最初の二重結合があることを示しています。

 

(Ⅰ)n-6系脂肪酸

n-6系脂肪酸は大豆油などの植物性脂質に多く含まれるリノール酸や、魚油、肝油など動物性脂質に多く含まれるアラキドン酸があります。

また、アラキドン酸は身体内でリノール酸から生成されます。

リノール酸(C18:2)主にとうもろこしや大豆油から摂ることができる身体では生成することができず、必ず食事など体外から摂る必要がある(必須脂肪酸)
アラキドン酸(C20:4)肝臓から作った肝油に多く含まれる身体内でリノール酸から生成される

 

(Ⅱ)n-3系脂肪酸

n-3系脂肪酸はアマニ油に多く含まれるα-リノレン酸の他、魚に多く含まれる脂質で有名なドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)もn-3系脂肪酸に分類されます。

α-リノレン酸(C18:3)アマニ油やしそ油に多く含まれる身体では生成することができず、必ず食事など体外から摂る必要がある(必須脂肪酸)
エイコサペンタエン酸(C20:5)ドコサヘキサエン酸(C22:6)魚油に多く含まれる身体内ではα-リノレン酸から生成される

 

 

必須脂肪酸・・・リノール酸、α-リノレン酸

 

多価不飽和脂肪酸のうち、n-6系脂肪酸のリノール酸や、n-3系脂肪酸のα-リノレン酸は身体内で生成することができず、必ず食事などから摂る必要があります。

このような体外から摂る必要がある脂肪酸を必須脂肪酸といい、リノール酸とα-リノレン酸は必須脂肪酸です。

また、n-6系脂肪酸はリノール酸から他の脂肪酸が、n-3系脂肪酸はα-リノレン酸から他の脂肪酸が身体内で生成されるため、

リノール酸やα-リノレン酸が欠乏すると他のn-6系、n-3系脂肪酸も欠乏してしまいます。

このことからn-6系、n-3系脂肪酸をまとめて必須脂肪酸と呼ぶ場合もあります。

 

 

トランス脂肪酸とは

 

一価不飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸は二重結合がある脂肪酸ですが、

その二重結合の形には2種類あり「シス型」と「トランス型」と呼ばれる形があります。

自然界に存在する不飽和脂肪酸はほとんどがシス型で、トランス型はわずかしかありません。

 

一方で、トランス脂肪酸は人工的に作られていろいろな食品に使われています。

トランス脂肪酸は不飽和脂肪酸に水素添加して作られ、マーガリンやショートニングの材料となっています。

トランス脂肪酸はこのように人工的に生成されるため利便性が良い特徴があり、お菓子やパンなどの食品に含まれています。

 

他方ではトランス脂肪酸の摂取によって健康へ悪影響があることが世界的に報告されています。

主な健康被害としては血中 LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の増加や血中HDLコレステロール(善玉コレステロール)の低下による動脈硬化リスクの上昇により,心臓や循環器疾患のリスクを高めてしまうことが挙げられています。

 

現在日本の食文化から、日本人ではトランス脂肪酸の過剰摂取が大きな問題とはなっていませんが、

脂質を多く含む食品を普段から良く摂る食生活をしている方は、トランス脂肪酸を過剰摂取している可能性があります。

その食品にトランス脂肪酸が含まれているかは表記されていないと不明なこともあるため、元の脂質の摂りすぎを気を付けておきましょう。

 

 

まとめ

○脂肪酸とは炭化水素が直鎖状に結合している物質で、炭化水素の数により「短鎖脂肪酸」、「中鎖脂肪酸」、「長鎖脂肪酸」がある。

○脂肪酸は炭化水素の二重結合の数によって「飽和脂肪酸」、「一価不飽和脂肪酸」、「多価不飽和脂肪酸」に分類される。

○リノール酸、α-リノレン酸は必須脂肪酸。

 

 

以上脂肪酸について解説しました。

次回はリポタンパク質について解説します。

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