「【管理栄養士おすすめ】減塩のコツ」の後半です。
ここでは減塩を実践していく上での考え方の続きを紹介し、最後に今回で最も重要な栄養バランスについてご紹介します。
前半をまだ読んでいない方はこちらからどうぞ。
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!注意! 病気を抱える方に対しては栄養士から「制限」「食べてはいけない」と言うことがあります。治療に必要な食事療法ですので指示に従ってください。
- 減塩の考え方を知る
- 塩味以外の味覚を知る
- 代表的な「代わりの」味付けを実践する
【管理栄養士おすすめ】減塩のコツ②
- 見えない食塩に注意する
- 食塩の多く含む食べ物を控える
- 食塩は量のバランス調整を理解する(推奨)
4.見えない食塩に注意する
減塩を進める上で気をつけていただきたいことがあります。
それは目に見えない食塩を摂りすぎないようにすることです。
目に見えないとは、「食品に練りこんであり味ではわかりにくい」ものや「食塩と書いてない」ものです。
食品に練りこんであるものの例として、かまぼこなどの練り製品、パン、めんなどです。
これらは製造の過程で食塩を加えています。
レトルト食品や缶詰などの保存食なども食塩の量に注意が必要です。
練り製品やパン、めんなどは食塩が含まれていることを知っていれば良いですが、塩味を感じにくい方もおり知らずのうちに食塩を摂っている場合があります。
食べてはいけないわけでないです。食塩が含まれていることを知っておいてほしいということです。
また、食塩と書いてないものとしてうま味調味料があります。
うま味だからいいじゃないかと思われますが、人工的なうま味調味料は○○酸ナトリウムと名前が付くようにナトリウムでできています(いろいろな種類があり○○としています)。
食塩は正確には塩化ナトリウムと言い、うま味調味料と同じナトリウムでできていますので、摂りすぎには注意しましょう。
減塩での勧める『うま味』はこんぶやかつお節といった食材本来の『うま味』です。
食材本来の味を楽しむ食事の方がより好ましいですが、もちろんうま味調味料も使ってはいけないわけではありせん。こちらも食塩を摂っているようなものと知っておくことが重要です。
5.食塩の多く含む食べ物を控える
言われてみれば当たり前ですが、そもそも食塩を多く含む食べ物を摂らないのが一番わかりやすいです。
ラーメンのスープを飲み干さない、ソースやしょうゆをつけすぎない、塩を入れすぎないといったことで十分な減塩となります。
また、食事自体を食べ過ぎないことも減塩となります。
食塩を減らしても、食べる量が多すぎると絶対量として食塩を摂りすぎてしまいます。
栄養士は意識して食塩を控える方がほとんどですし、実感としてもこの方法は簡単で効果的だと思います。
お酒好きの方も、お酒と合わせて塩辛いものを食べすぎないようにしていますね。
食塩は意識しなくても不足することはないと言われていますので、むしろ意識して摂らないようにするくらいがちょうどいいでしょう。
日本人のナトリウム摂取量は、食塩摂取量に依存し、その摂取レベルは高く、通常の食生活では不足や欠乏の可能性はほとんどない。
厚生労働省:日本人の食事摂取基準2020年版
6.食塩は量のバランス調整を理解する
最後ですがとても重要ですのでぜひご参考に。
ここまで減塩を勧めてきましたが、実際のところ栄養士と言っても梅干しも漬物も食べますし、チーズもかまぼこも、インスタント食品も食べます。
そもそも栄養学には「これさえ食べておけばいい」といった万能なものはありませし、毒でもない限り「これを食べてはいけない」もありません。
私が食塩を「摂らないように」ではなく「摂りすぎないように」と述べるのは食塩を全くとってはいけないと言うつもりはなく、過剰な摂取が好ましくないことをお伝えしたいからです(ここでの過剰とは前回紹介した目標量を超えることを指しています)。
栄養はバランスが大事とよく言いますが、食塩の摂り方もあるバランスを整えれば、まったく食べてはいけないとはなりません。むしろ栄養バランスを整えることで減塩を継続しやすくなります。
今回で最も理解してもらいたいことは、
減塩における栄養バランスとは食塩の量のバランスを指すといことです。
(栄養バランス自体の詳細は別のとこで紹介します。)
減塩では食塩の量のバランスを「1日のなかで」もしくは「日をまたいで」調整します。
考え方は難しくなく、例えば夕食は飲み会でおつまみなど塩辛いものを食べることが分かっているのならば、その日の朝食、昼食では食塩をあまり摂らないように調整します。
また、昨日食塩の多い食べ物を摂りすぎたのなら翌日は控えるように量を調整しましょう。
このように1日のなかで、あるいは日をまたいで食塩の摂る量のバランスを整える方法です。
この量のバランス調整の考え方は減塩に限らず、栄養管理においてとても重要な考え方です。
栄養士でも毎食必ず栄養バランスの整った食事を摂っている方は少ないです。私はむしろ毎食ごとに栄養バランスを整えることに固執しないほうがいいと考えています。
毎食食塩を摂らないようにすると、食塩を多く含んでいる梅干しや漬物は食べてはいけないということになってしまいます。ですが例えば梅干しにはクエン酸などの栄養素が含まれていますので別の視点では健康維持に有効と考えられます。
また、梅干しや漬物などなんでも同じですが特定の食品を摂ることについて否定することは、食べることの楽しみを削り、その食文化を否定することになりかねません。
栄養士としてそのようなことは望みません。食事はおいしく楽しく、そして尊重されるべきで、それを阻害するようなことはしたくありません。
減塩の話に戻すと、せっかくの飲み会で仲間と楽しく食事をする時間に自分だけ食べられないのはつまらないでしょう。そのような我慢がストレスとなり、減塩の継続をやめる原因となります。
栄養士が勧めるのは食塩の量のバランスを調整し、平均で目標量である1日当たり成人男性7.5g未満、女性で7.0g未満を達成することです。
毎日目標量を下回らなければ減塩にならないといったことはありません。
つまり、食塩を多く摂ることが分かっているならその前の食事で控えておく、また食塩を摂りすぎたら次の食事で食塩を控えるというように食塩の摂取量を調整すれば大丈夫ということです。
むしろ調整しないと栄養バランスが乱れます。
「摂りすぎる前に控える、摂りすぎたら控える」を実践してみてください。
食事を選ぶ上で指標となりますし、食べたいときは適度に食べるという食事本来の楽しみを感じることもできますから(もちろん、いつでも摂りすぎはやめたほうがいいですが)無理なく実践できると思います。
以上で「管理栄養士が紹介 続けられる減塩方法」を紹介しました。
減塩は高血圧などを予防し健康を維持する上で有効な食事です。しかし減塩のメリットはそれだけでなく、様々な味覚が組み合わさることで食事が豊かになることや、食材のもつ本来の味を楽しむことができることとった、食事のすばらしさを感じることができることも大きなメリットではないでしょうか。
減塩は決しておいしくない食事をとることではなく、また食べたいものが全く食べられなくなるのではありません。
減塩の進め方、特に量のバランス調整を覚えることで減塩が継続しやすく、食事がより豊かになると思います。
栄養は日々の積み重ねが健康を維持する大きな基礎となります。継続は力なりです。
これを機に減塩を始めてみませんか。
高齢者における減塩を実施するにあたり注意点がありますので別にご紹介します。先に少し話をすると、高齢の方は減塩がかえって悪影響を引き起こす可能性がありますので、ぜひご一読ください。