「たんぱく質を摂る食事が健康にいいと聞いたけれど、たんぱく質をどれくらい摂ればいいかわからない」
「自分にとって必要なたんぱく質の量を知りたい」
たんぱく質は身体の機能を維持していく、引いては健康を維持するために欠かせない栄養素です。
運動をよくするひとは、筋肉量を増やすためにたんぱく質を多く摂った方がいいと聞いたことがあるかもしれません。
また、高齢の方がフレイルを予防するためにもたんぱく質をしっかり摂ることが大切となります。
健康維持にもスポーツのためにも、まずは栄養バランスの整った食事が基盤となります。
栄養バランスを整えるためにも、たんぱく質を食事から摂れるようにすることが大切です。
ここでは1日に必要なたんぱく質の量を摂る方法を紹介します。
自分のたんぱく質必要量を把握し、食事から不足なくたんぱく質を摂れるようにしていきましょう。
この記事では6歳~75歳を対象とした食事の目安を紹介しています。
妊婦・授乳婦の方や治療のため食事療法を行っている方は1日に必要なたんぱく質の量が異なりますので、担当の栄養士に従ってください。
1日に必要なたんぱく質の量を摂る方法
①「日本人の食事摂取基準2020年版」をもとに必要なたんぱく質量をチェックする
1日に必要なたんぱく質の量を知る方法で最もわかりやすく、かつ適切な方法は
厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準2020年版」を参考にすることです。
「日本人の食事摂取基準2020年版」では、性別と年齢から1日に必要なたんぱく質の量がそれぞれ定められています。
日本人の食事摂取基準2020年版は管理栄養士などの専門職向けで読むのに難しいところがあるので、
ここでは日本人の食事摂取基準2020年版のうちたんぱく質の「推奨量」を1日に必要なたんぱく質の量として紹介します。
日本人の食事摂取基準2020年版では、たんぱく質の食事摂取基準を推定平均必要量、推奨量、目標量、目安量(1歳未満)の4つの指標で示していますが、
この記事を読んでいただく方にフレイル予防など健康の維持を目的とした食事を摂っていただきたいため、推定平均必要量ではなく推奨量を示しています。
自分の「性別」と「年齢」に合わせて表から選んでください。
(例)32歳男性 1日に必要なたんぱく質量は65gです。
この表のたんぱく質量は、年齢層ごとの平均的な必要量を示しています。
ひとによって身長や体重は異なるので、
細かくいうとこの表にある必要なたんぱく質量はひとによって違う場合があります。
ですが、この表の基としている日本人の食事摂取基準2020年版では、たんぱく質量の推奨量は健康維持と病気の予防のために、平均的な必要量から上乗せして設定されています。
よってこの表のたんぱく質量を1日で摂っていればほぼ不足することはありませんので
この表を参考にして問題ないです。
(参考)標準体重から算出する
とは言うものの、個別のたんぱく質必要量を計算する方法はないのかと言えば、あります。
臨床現場などでは個別の状態に合わせて必要なたんぱく質量を設定していますので、
こちらで実際に管理栄養士が使っている方法を紹介します。
方法の概要は「標準体重にそのひとの状態や今後必要とするたんぱく質の量を係数として掛け合わせて算出」します。
以下が算出の流れです。
- 標準体重を計算する
- 状態をみながらたんぱく質必要量の係数を設定する
- たんぱく質必要量を計算する
わかりやすいように例をみながら解説します。
(例)41歳女性 身長150cm 標準体重49.5kg
会社員 運動は週2回ウォーキングする程度 健康状態は良好
まず、たんぱく質必要量を計算する対象のかたの標準体重を計算します。
標準体重の計算方法は以下をご覧ください。
次に、対象者のたんぱく質の必要性をみます。
今回の例では会社員で状態は健康、運動は週2回のウォーキング程度だと、たんぱく質必要量の係数は「1.0」に設定します。
最後にこれらをもとに計算します。
計算式は標準体重に先ほどの係数を掛け合わせます。
標準体重49.5kg × たんぱく質必要量の係数1.0 = 49.5g
このかたが1日に必要なたんぱく質量は49.5gとなります。
この計算方法は標準体重に係数を掛けるだけなので、一見簡単なようにみえますが、
たんぱく質の必要性は詳細な規定はなく、係数を設定するときに個々の裁量によってバラつきがあるので必要なたんぱく質の量に幅が出てしまいます。
なので、この計算方法はあまりおすすめしません。
健康維持を目的とするならば日本人の食事摂取基準2020年版を基にするのが好ましいです。
②普段よく食べる食品の中でたんぱく質を多く含む食品を把握して食事管理する
ここまで1日に必要なたんぱく質の量をみてきましたが、
注意してほしいのが、たんぱく質の量は「たんぱく質という栄養素としての量」であって、「肉や魚などの食品の量」ではないので間違えないようにしてください。
1日のたんぱく質の必要量が60gの場合、60gの豚肉を食べると必要な量が摂れているといったことにはなりません。
それは豚肉を60g摂っても、豚肉の中にはたんぱく質以外の栄養素も多く含まれているためです。
当たり前のことですが重要なので確認しておきましょう。
つまりここで覚えてほしいことは、
「どの食品をそれくらい摂ったら1日に必要なたんぱく質を摂ることができるかを知る」ことが健康を維持する食事を摂るのに大切であるということです。
普段よく食べる食品のたんぱく質を知る
まずは、普段よく食べる料理に使われている食品にどのくらいのたんぱく質が含まれているのかを知りましょう。
ポイントは「普段よく食べる」食品です。
特別なものやたまにしか食べないものまで覚えると大変なうえ、
そもそも日常的に食べないものはあまり気にしなくても栄養に影響ないからです。
管理栄養士は栄養バランスを少なくとも3日分の食事で、ひとによっては1週間分の食事の中でバランスを摂れるように献立を調整します。
というのも毎日同じようなものばかり食べていると確かにバランスは崩れにくいですが、
食事としての意義、偏った食品を摂ることによる弊害などを考えると
いろいろな食品を組み合わせながら3日~1週間の間で食事の栄養バランスを整えていく方がいいからです。
このあたりの詳しい解説は「セルフマネジメント」内の記事にまとめます。
つまり、食事の管理は1回の食事で特別な料理を摂ることがあっても他の食事機会で調整すれば結果的にバランスを整えることができるので、
ここで普段自分が食べるもののたんぱく質量を知っておいて、食事の調整に使えるようになりましょう。
以下によく食べられる食品の一例とたんぱく質の量を示します。
この表に載せている肉や魚は生の調理前の状態での重さです。
細かい数字まで覚えることができれば、それに越したことはないですが、
当然食品にも個体差があるので完全に数字を覚えなくてもいいです。
重要なのは、どのような食品を食べると自分に必要なたんぱく質の量を満たすことができるかを知っておくことです。
例えば1日に必要なたんぱく質の量が60gの方の場合、朝は食パンを、昼と夜はご飯を食べるとき
食パン分のたんぱく質 5.4g + ご飯分のたんぱく質 7.6g = 13.0g
となり、主食で1日当たり13.0gのたんぱく質を摂ることになります。よって、
1日に必要なたんぱく質 60g - 主食で摂るたんぱく質 13g = 47g
となり、主菜や副菜で47gのたんぱく質を摂る必要があります。
そこで昼にさば料理を主菜に、副菜に納豆を食べる
夜には鶏もも肉料理を主菜にして、副菜に木綿豆腐を食べることにすると
さばのたんぱく質 20.6g + 納豆のたんぱく質 8.3g + 鶏もものたんぱく質 17.3g + 木綿豆腐のたんぱく質 7.0g = 53.2g
となりますので主菜、副菜で53.2gのたんぱく質を摂ることになります。
これらをまとめると、
主食分のたんぱく質 13.0g + 主菜、副菜分のたんぱく質 53.2g = 1日に摂るたんぱく質 66.2g
となるため、1日に必要なたんぱく質60gを超えており、たんぱく質を不足なく摂れていることになります。
しかも、朝食の主菜、副菜分なども合わせるともっと多くのたんぱく質を摂れることになります。
ポイントは「(上記の表にある)たんぱく質を多く含む食品を1日で4品食べている」ことです。
このように普段よく食べる肉や魚、卵、大豆製品などをたんぱく質を多く含む食品を知っておき、
その食品を1日の中で4~5品食べるようにするとたんぱく質をおおかた不足なく摂れます。
繰り返しますが、たんぱく質を不足なく摂るには、
細かなたんぱく質量を覚えるよりも、普段よく食べる食品の中でたんぱく質を多く含む食品を知り、普段からよく摂るように食事管理することです。
これが実践的で継続しやすい方法ですのでぜひ覚えていただきたいです。
まとめ
○自分に必要なたんぱく質の量を知る
○普段よく食べる食品の中で、たんぱく質を多く含む食品を把握し、食事に取り込む
以上で1日に必要なたんぱく質の量を摂る方法を紹介しました。
この方法は健康維持に欠かせない食事の考え方なのでぜひ使ってみてください。