【管理栄養士より】尿酸値が高いと言われた?尿酸値を下げる食事を解説

セルフマネジメント

病院の受診や健康診断などで血液検査をしたときに「尿酸値が高いです」と言われたことがありませんか。

尿酸値が高い状態を放置しておくと「痛風」という病気のリスクが高くなります。

痛風はその名の通り風が吹いただけで痛いと言われるほどの関節炎で、普段の生活に影響があります。

そうなる前に尿酸値を改善し、正常な状態を維持していくことが今後の生活に欠かせません。

 

一方で、尿酸値は食事が大きく影響しており、尿酸値を下げるには食事を見直すことが重要です。

ここでは尿酸値を下げるための食事を解説します。

 

 

高尿酸血症とは

 

高尿酸血症とは、血液中の尿酸の量が多い状態のことで、身体内の尿酸が多かったり尿酸の排出がしにくかったりすることで尿酸値が高くなります。

通常、尿酸は身体の構成の基盤となる核酸という物質が代謝され生成された後に、尿として体外に排出されます。

しかし、尿酸の排泄が十分でなく身体内に尿酸が溜まると、尿酸が結晶化し関節に沈着します。このことが関節炎や結石などが生じる痛風や腎臓の病気を引き起こしています

 

 

なぜ尿酸値が高いと食事を見直すことが重要なのか

 

尿酸の元となる核酸はプリン体のひとつであり、私たちは食事からプリン体を摂取して身体内で核酸を構成し生命を維持しています。

しかし、そのプリン体を食事で摂りすぎて尿酸が身体内で多く生成されると身体内に尿酸が溜まり高尿酸血症となります

よって尿酸値が高くなるプリン体そのものの摂取を減らすことが、尿酸値を下げることに有効です。

 

また、糖尿病や肥満になると、尿酸を身体外に排出する能力が低下し尿酸が身体内に溜まりやすくなり尿酸値が高くなります

糖尿病や肥満は食事の乱れが発症原因のひとつであるため、食事を見直し糖尿病や肥満を改善することで結果的に高尿酸血症を改善することに繋がります。

 

以下のページで尿酸値を上げやすい食事の特徴について詳しく解説しています。

 

 

尿酸値を下げる食事の具体的な内容

 

では具体的にどのような食事を摂ることで尿酸値を下げることができるのか、献立の立て方を解説します。

尿酸値を下げる食事のポイントは以下の通りです。

  • ①自分に合った食事の量を摂り肥満や糖尿病を予防・改善する
  • ②尿酸値を上げる食品を控える
  • ③尿酸値を下げる食品を多く摂る

以下具体的に解説します。

 

Ⅰ食事の量(総エネルギー量)の設定

 

1日で摂る食事の量は「自分の年齢・性別」、「体格」、「今治療している病気」によって設定します。

 

①自分の年齢・性別、体格に合った食事の量を決める

管理栄養士が献立を立てるときに食事の量(総エネルギー量)は食べる人の年齢や体格をみておおよそを設定し、食べる人が治療している病気に合わせて調整します。

この理由は、食べる人の年齢・性別や体格によって、身体を動かすのに必要なエネルギーの量が異なるためです。30歳よりも70歳の方のほうが必要な食事の量は少なく、女性よりも男性の方が必要な食事の量は多いです。

また、やせ型の体格よりも大きい体格の方のほうがより必要な食事の量が多くなります。

このようにひとそれぞれ食事の量は異なるため、食事の量を設定するときには自分の年齢・性別、体格をみながらおおその食事の量を決めます。

 

自分の年齢・性別、体格に合った食事の量については以下のページにまとめていますので自分の食事の量を確認してください。

 

②糖尿病や肥満の改善に向けて食事の量を調整する

おおよその食事の量を決めたら、次は治療している病気に合わせて食事の量を調整します。

今回のように尿酸値を改善する食事の場合では、糖尿病や肥満の病気を改善する食事の基準に合わせて調整をかけます

 

糖尿病や肥満を改善する食事の量は「体重が標準体重になるように」設定します。

標準体重とは自分の身長から計算した体重の指標で、いわば自分の身体に適した体重です。管理栄養士が栄養管理をおこなう上でもよく指標として使われます。

標準体重の計算式は「身長(m) × 身長(m) × 22」です。

標準体重の詳細は以下のページにをご参考ください。

 

標準体重を計算したら、自分の標準体重を使って食事量を算出します。

糖尿病や肥満を治療する食事では、自分の標準体重に25~30をかけた数字が1日の食事の量とされています。

 

例えば標準体重60kgの場合、「60 × 25~30 = 1500~1800 (kcal)」となり、1日の食事量を1500~1800kcalとなります。

糖尿病の食事についての詳細を以下にまとめていますのでご参考ください。

 

以上、食事の量を計算したら

最後に先程の年齢・性別、体格に合った食事の量とを比較します。

 

極端に違いがなければ糖尿病や肥満を改善する食事の量(標準体重×25~30)に設定します。

年齢・性別、体格の方が多く、また今の食事の量と比べても糖尿病や肥満を改善する食事の量(標準体重×25~30)が少なすぎると感じた場合は、まずは年齢・性別、体格に合った食事の量に設定します。

その後体重が減少し身体が慣れてきたら糖尿病や肥満を改善する食事の量(標準体重×25~30)に設定します。

 

 

Ⅱ主食

 

主食となるご飯の量は、1日の食事の量に合わせて設定します。

ご飯の量の設定は以下のページからご確認し設定してください。

 

主食としてパンを摂るときは、1食当たり5~6枚切りの食パン1枚を目安にします。

 

また、精製された穀類はより血糖値を上げやすい特徴があり、インスリンという血糖値を下げるホルモンがより多く分泌されます。

インスリンが多く分泌されると尿酸が排出されにくくなります。

よって、同じ主食でも、ご飯は白米ではなく五穀米や雑穀米を加えたり、雑穀入りのパンに置き換えたりするとより有効です。

 

主食の量が決まったら、残りのエネルギー量を主菜と副菜で摂れるよう献立を立てます。

 

 

Ⅲ主菜

 

主菜ではたんぱく質と脂質を摂れるよう設定します。

主菜のメイン食材となる肉や魚、豆腐などは自分の手のひらの片手に並べて乗るくらいの量を目安として使用し、野菜を多めに加えて1品とします。

また、レバーなどの内臓や白子、いくらなどの魚卵、干物などはプリン体をより多く含んでいるので、これらの食材は嗜む程度として普段からの摂取は控えましょう。

 

一方で、レバーなどに限らず肉類や魚類は全般的にプリン体を多く含んでいます。

ですが、肉や魚は良質なたんぱく質源でもあり、また貴重な脂質源でもあるので、肉類や魚類すべてを制限して食べないようにするのは非現実的です。

 

そこで1日に1食は肉料理や魚料理ではなく、卵、豆腐などの大豆製品、牛乳・乳製品をメインとした料理に置き換ることで、

肉類や魚類の過度な摂取を控えながら栄養素を確保するようにします。

特に牛乳・乳製品に含まれる乳たんぱく質は尿酸値を下げる作用があるのでより効果的です。

 

また、肉類や魚類だけでなく、大豆にもプリン体が含まれていますが、

同じプリン体でも大豆に含まれるプリン体の種類から尿酸値へ影響しにくい特徴があります。なので肉魚から大豆製品に置き換えることで、摂取するプリン体の質を変えて尿酸値を上げにくくすることができます。

 

 

Ⅳ副菜・汁物

 

主食、主菜が決まったら、副菜を1~2品、汁物を1品組み立てます。

副菜や汁物を組み立てるときは、食物繊維を多く摂ることを意識します。

食物繊維には、糖の吸収を穏やかにしたり脂質の吸収を抑えたりする作用があるとともに、食事の満腹感が大きくなることで過食を防ぐこともできるので、

副菜や汁物で食物繊維を多く摂れるように組み立てます。

 

具体的には、肉類や魚類は基本的に使用せず、野菜類、海藻類、きのこ類を多く取り入れます

野菜を摂ることでアルカリ性の成分を吸収することとなり、酸性の尿酸を中和させることができます。

海藻類やきのこ類も食物繊維を多く含んでいるので積極的に使用しましょう。

 

副菜や汁物にじゃがいもなどのいも類を使っても大丈夫です。ただし、いも類は糖質を多く含むので摂りすぎに注意してください。

また料理によっては肉類や魚類を使用することもありますが、プリン体を多く含んでいることから嗜む程度とし普段は使用しないようにします。

 

献立を立てるポイントとして、1日3食の主食、主菜、副菜(できれば2品)、汁物に使った食品の種類が30品以上になるよう組み立てれば、いろいろな栄養素が摂れる献立になりやすくなります。

副菜や汁物の献立は、野菜類、海藻類、きのこ類を中心に、卵や乳製品、大豆製品を合わせながら多くの食品を摂れるように設定しましょう。

 

 

Ⅴ食事の注意点

 

献立を立てる際の注意点をまとめます。

  • (1)味付けは塩味に偏らず、5味(甘味、酸味、苦味、うま味、塩味)をバランスよく摂れるようにします。
  • (2)かつお節のうま味成分であるイノシン酸はプリン体なので、かつお節だけでなく昆布など別のうま味を組み合わせて使用し、うま味の相乗効果を活かしてかつお節に偏りすぎないようにします。
  • (3)飲み物は水やお茶を基本に、お酒や清涼飲料水は嗜む程度にします。
  • (4)果物やお菓子は極端に制限する必要はないですが、過度な摂取は控え嗜む程度にします。

 

  

【推奨】「DASH食」で尿酸値を下げる

 

DASH食という食事を聞いたことはありますか?

DASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)食は高血圧を予防・改善することに特化した食事です。

DASH食の特徴は、動物性食品を減らし、代わりに植物性食品や牛乳・乳製品を積極的に摂る食事で、DASH食により多くのアルカリ性の成分を摂ることで尿酸を排出しやすくすることが期待されます。

 

また、DASH食は普段私たちが食べている食品で実践することができ、DASH食の考え方が和食に近いことも相まって、日本人の食文化に馴染みやすい特徴があります。

高尿酸血症だけでなく、高血圧も改善したい方はDASH食を取り入れた食事をおすすめします。具体的なDASH食についての詳細は以下にまとめていますのでご参考ください。

 

 

まとめ

○主食は食事の量に合わせて決める。五穀米や雑穀米、雑穀入りパンを活用する。

○主菜は肉、魚だけでなく、1日のうち1回は卵、大豆製品、牛乳・乳製品をメインとする。

○副菜や汁物は野菜や海藻、きのこ、いもを活用して、1日で30品目以上摂れるようにする。

 

 

以上、尿酸値を下げるための食事を解説しました。

繰り返しますが、尿酸値を改善するには普段の食事がとても重要となります。

ただし極端に制限するのではなく、長い目で実践できるように少しずつ変えていきましょう。

タイトルとURLをコピーしました