「咀嚼」から「排泄」まで一連の流れを理解する 【独学用 管理栄養士による栄養学解説】

独学

普段何気なくおこなっている食事ですが、

食事を摂る動作の中で、身体では様々な機能が多様に連携し合って栄養を取り込みます。

この身体の動きを理解することが、

栄養学を学んで普段の生活に活かすうえでの基本となります。

今回は基礎となる「咀嚼」から「排泄」までを一連として解説します。

 

 

食事を摂ることは「栄養を摂る」こと

 

食事を摂る一連の流れを見る前に、そもそも食事を摂るとはどのような意味があるのでしょうか。

以前に「食事を摂ることの意味」を解説しましたが、改めて食事を摂るとはひとにとってどのような意味があるのか考えてみましょう。

 

 

食事を摂ることの大きな目的は「栄養を摂る」ことです。

 

私たちが生命を維持し続けるために必要な栄養を、身体の外側から摂る手段として食事を摂ります。

もちろん、食事を摂るとおいしいという感情から精神的に癒される効果もあります。ごはんが好きで、それまでに仕事や課題を頑張って終わらせようというように、食事を摂ることが行動の原動力になることもあるでしょう。

ただ、どちらも基盤として栄養を摂ることが非常に重要で、生命を維持しないと癒されることも頑張ろうと奮起することもできません。

 

生命を維持するために栄養を摂ることが基礎にあって、

食事を楽しんだりモチベーションになったりするという付加的な意味で食事の豊かで多様な効果が発揮されます。

栄養学を独学で学ぶうえで、まずは「生命を維持するために、食事からどのように栄養を摂るのか」に着目して理解を深めていきましょう。

 

 

食事を摂る一連の動作は「咀嚼」から「排泄」まで

 

では、具体的に食事を摂るとき、ひとはどのような動作をおこなっているのでしょうか。

食事を摂ることは「栄養を摂る」という目的を果たすためとすると、

目の前にある食事からどのようにいろいろな栄養素を身体に取り込んだらいいでしょうか。

 

食事を摂る一連の動作は、以下のようにどの栄養素に対しても共通する過程があります。

  1. 食べ物を「咀嚼・嚥下」する
  2. 食べ物を「消化・吸収」する
  3. 食べ物を「排泄」する

それぞれ概要を解説します。

(各過程の詳細は次回以降で解説します。)

 

 

過程① 咀嚼・嚥下

食事を摂る始めには、目の前にある食べ物を口に運び入れます。そして口の中で食べ物を噛んで味わい、食べ物を飲み込みます。

これらの動作を「咀嚼・嚥下」と言います。

咀嚼・嚥下は食事を摂る最初の過程であり、また身体内に栄養素を取り込むスターターです。

 

過程② 消化・吸収

咀嚼・嚥下した食べ物は、胃や腸といった消化器が働いて食べ物から栄養素を取り込みます。

この過程を「消化・吸収」と言います。

消化・吸収は栄養素の種類によって経路が異なり、それぞれの栄養素がより効率よく取り込まれるようになっています。

この消化・吸収が栄養素を取り込む玄関口となります。

 

過程③ 排泄

消化・吸収を経て身体内に取り込まれなかった食べ物は便として、身体内に吸収された栄養素が使われたあと不要となった物や摂りすぎた栄養素は尿として身体外に排出されます。

この便や尿として排出することを「排泄」と言います。

食べ物や不要物などを排泄することで身体に必要なものをより精査し、より有用な栄養素を取り込むことができます。

なお身体内に吸収された栄養素は尿のほかに汗などでも排出されます。

 

 

栄養学では「食べる」動作を一連として把握することが重要

 

以上食事を摂る一連の流れについて「咀嚼・嚥下」、「消化・吸収」、「排泄」の概要を紹介しましたが、

この3つの過程はバラバラではなく、『一連の流れ』として把握しておきましょう。

その理由は「咀嚼・嚥下」、「消化・吸収」、「排泄」のどの過程でも問題が生じれば食事を摂ることに支障が出るためです。

 

例えば、噛む力が弱くなり「咀嚼・嚥下」の過程が不十分だと、食べ物を身体に入れることができなくなったり、消化・吸収が十分に行われなかったりして栄養を取り込むことができなくなります。

病気で胃が十分に働かず「消化・吸収」の過程が進まなくなると、食べ物から栄養素を分解できず、栄養素を取り込む玄関口に入らなくなってしまいます。

また便秘で排泄ができないと、身体の中でたべものが詰まってしまい、次の食事を摂っても食べ物が流れず消化・吸収ができなくなってしまいます。

 

このように3つの過程が十分に働くことで、栄養を摂る作用が発揮されます。

反対に言うと、どこかの過程に支障がる場合は、食事そのものを調整し不具合のある過程を補う必要なあります。

 

 

問題のあるところは食事を調整して「栄養を摂る」

 

「咀嚼・嚥下」、「消化・吸収」、「排泄」のどこかで問題が生じている方は

食事の内容を調整し栄養を摂りやすいようにします。

 

先程の例で言うと、

〇噛む力が弱くなり「咀嚼・嚥下」の過程が不十分

 ➡食材がやわらかくなるよう加熱したり、刻んだりして十分に噛めなくても安全に飲み込めるようにする。

〇病気で胃が十分に働かず「消化・吸収」の過程が進まない

 ➡ごはんをお粥にする、生野菜ではなく加熱した野菜を使うなど、胃に負担がかからないような料理を提供する。

〇便秘で排泄ができない

 ➡食物繊維の多い野菜やいも類を多く取り入れた食事とし、水分をこまめにとるように支援する。

このように食事を工夫することで「咀嚼・嚥下」、「消化・吸収」、「排泄」の問題過程を補うことができます。

 

これらはあくまでも一例であり、食事を摂る方の個々に適した食事となるよう調整し、栄養をしっかりと摂れるよう支援します。

重要なことは、今回のように「栄養を摂るために問題点を補う」ことも栄養管理の重要な視点であり、栄養学を学び実践的に栄養学を生かすうえで欠かせないポイントであることです。

 

これから栄養学を学ぶにあたって、自分の食生活を振り返りながら

「自分(または食事を摂る方)にとってなにが問題でどのように補うといいのか」という視点で勉強を進めてみてください。

より栄養学が楽しくそして理解しやすくなりますよ。

 

 

まとめ

○食事を摂ることは「栄養を摂る」こと

○食事は「咀嚼・嚥下」、「消化・吸収」、「排泄」の3つの過程が一連に流れる

○「咀嚼・嚥下」、「消化・吸収」、「排泄」のうち支障をきたす過程を補うように栄養管理をおこなう

 

 

以上、「咀嚼」から「排泄」まで一連の流れを解説しました。

次回は「咀嚼・嚥下」について詳しく解説します。

 

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