鉄分は赤ちゃんの脳などの中枢神経の発達にとても大切な栄養素です。特に鉄は日常的に摂りにくい食材が多いため、食事だけでは不足しやすいうえ、ミネラルのなかでも吸収率が低く、大人でも意識して摂らないと不足してしまいます。離乳食が3回になる離乳後期頃には栄養バランスを意識して、鉄分も取り入れていきましょう。
今回は赤ちゃんの脳の発達にも欠かせない「鉄」について、鉄分不足の見分け方や鉄分必要量、効率よく摂取するポイントなどについて紹介します。
赤ちゃんでも鉄不足になる?
赤ちゃんの体に蓄えられている鉄は、生後5ヶ月頃から減少し始め、生後6ヶ月頃から不足した状態になりやすいといわれています。
赤ちゃんも鉄が欠乏した状態が続くと、鉄欠乏性貧血に進展します。また、乳幼児の鉄不足は貧血だけではなく、身体の発育や精神・運動の発達遅延に影響があることが分かっています。
鉄欠乏貧血が症状として身体に現れた時には鉄欠乏が非常に進んでいる状態です。そのため、普段から意識して鉄を含む食材を取り入れて、症状が出る前に予防することが大切です。
特に母乳栄養の場合は、母乳中には鉄分があまり含まれていないため、鉄分が不足しやすく、注意が必要です。
必要量を補うために、適切な時期に離乳食を開始し、鉄を含む離乳食やミルクなどを取り入れていきましょう。
赤ちゃんの鉄分必要量
離乳期の食事摂取基準による鉄分必要量は次の表のようになっています。
推定平均必要量は50%の人が必要量を満たす量、推奨量はほとんどの人が不足することのないとされる量です。
推奨量の4.5~5.0㎎を摂取することが理想ですが、まずは推定平均必要量の3.0~3.5㎎を目指しましょう。
ただし、この数値は鉄の吸収率を15%として算定されたものです。鉄の吸収率は食材の種類だけでなく、身体の状態によっても異なります。また、乳幼児の鉄の吸収率はまだ研究段階で明らかになっていないため、その点で注意は必要です。
鉄分不足の見分け方や症状は?
「赤ちゃんは鉄分不足になりやすいので、鉄分をしっかり摂りましょう」とは言われるけど、実際うちの子は鉄分が足りているの?足りていないの?と思いますよね。
鉄分不足の症状としては、次のようなものが挙げられます。基本的には、大人の貧血と同じような症状が現れます。
☑ 顔が青白い
☑ 唇の赤みが薄い
☑ 口の端が切れている
☑ 目の粘膜の赤みが薄い
☑ 爪が白っぽい、スプーンのように反り上がる
☑ 食欲が落ちる
☑ 集中力がない
☑ イライラしている
☑ 疲れやすい
☑ 呼吸が早い
赤ちゃんの場合、集中力がない、イライラしているというのはわかりにくいかもしれませんが、ちょっとしたことで癇癪を起こすなど、いつもと違う様子を示す場合は、鉄が不足しているのかもしれません。
鉄を多く含む食材
鉄には吸収率の高い「ヘム鉄」と吸収率が低い「非ヘム鉄」があります。
ヘム鉄(吸収率15~25%)は肉や魚などの動物性食品に多く含まれ、非ヘム鉄(吸収率2~5%)は野菜や豆類、海藻などの植物性食品に多く含まれます。例外で卵、乳製品は動物性ですが非ヘム鉄です。
ヘム鉄のほうが吸収率が良いため、鉄分を摂るのはヘム鉄が多く含まれる赤身の肉や魚を積極的に摂取するとよいでしょう。非ヘム鉄の場合は、一緒に食べる物によって吸収率を高めることができます。これは次で解説するので参考にしてください。
鉄を効率よく摂るポイント
鉄はミネラルのなかでも吸収率が低い栄養素ですが、特に低いのが非ヘム鉄です。貧血改善の目的で鉄分を摂るにはもちろん吸収の良いヘム鉄がおすすめですが、非ヘム鉄も他の食材との組み合わせによって吸収率がアップします。
ビタミンCと一緒に摂る
非ヘム鉄はビタミンCと一緒に摂ると吸収率が上がります。
ビタミンCは野菜や果物、いも類に多く含まれていますが、加熱すると分解されやすいので、生で食べられるいちごやキウイフルーツなどの果物を食後のデザートにプラスするか、じゃがいもやピーマンなど加熱してもビタミンCが壊れにくい食品を組み合わせるとよいでしょう。
動物性たんぱく質と一緒に摂る
非ヘム鉄は肉や魚、乳製品、卵などの良質なたんぱく質を含む食品と一緒にとると吸収率がアップします。
特に赤身の肉や魚は鉄分も豊富なので、タンパク質と鉄が一緒に摂取できます。貧血の予防・改善におすすめの食材です。
ヘム鉄を含むレバーは鉄分だけでなく、ビタミンAも豊富に含んでいます。ビタミンAは摂取しすぎると、過剰症になる可能性があるため、注意しなければいけません。
このように、他の食材との組み合わせによって吸収率が上がるので、特定の食材ばかり食べるのではなく、いろいろな食材を取り入れてバランスよく食べることが、結果的に最も効率の良い摂取方法につながります。
ベビーフードを活用
ベビーフードを活用して鉄分を摂るのもおすすめです。
特にレバーは調理の下ごしらえに手間のかかる食材なので、ベビーフードを活用するといいでしょう。ベビーフードのレバーは、ビタミンAの量も過剰症の心配のない量に調整されているので、その点でも安心です。
鉄分が多く含まれる食材を使ったもの以外にも、鉄分が強化されているベビーフードがたくさんあります。以下の記事を参考にしてください。
フォローアップミルクを活用
フォローアップミルクは不足しがちな栄養を補うミルクです。乳幼児期の成長に欠かせない鉄やカルシウムが強化されています。貧血症状がある場合には、フォローアップミルクを活用するといいでしょう。脳の発達に大切なDHAも含まれているのは魅力的です。
メーカーによって9ヶ月~と1歳~のものがあります。離乳食でしっかりと栄養が摂れていれば、あえて飲む必要はありませんが、バランスよく栄養を摂るのはなかなか難しいものです。
牛乳ではダメなの?と思われる方もいるかもしれませんが、牛乳にはほとんど鉄は含まれていない上に、吸収率もよくありません。
フォローアップミルクは手軽に不足しがちな栄養を補えるので、とてもおすすめです。ミルクとして飲むだけではなく、離乳食にプラスしてあげると栄養が手軽に補給できますよ。
以上、赤ちゃんの脳の発達にも欠かせない「鉄」について、離乳食で使える鉄分を多く含む食材や効率よく摂取するポイントなどについて紹介しました。摂取の難しい鉄分ですが、意識的に離乳食に取り入れ、ベビーフードやフォローアップミルクなどを活用しながら、上手に鉄分を摂っていきましょう。