第38回 管理栄養士国家試験
18 アミノ酸、たんぱく質および脂質に関する記述である。 最も適当なのはどれか。1つ選べ。
(1)トリプトファンは、分枝アミノ酸である。
(2)βシートは、たんぱく質の三次構造である。
(3)飽和脂肪酸は、分子内に炭素─炭素の二重結合をもつ。
(4)トリグリセリドは、複合脂質である。
(5)アラキドン酸は、エイコサノイドの合成材料である。
正解 (5)
× (1)トリプトファンは、分枝アミノ酸である。
〔解説〕トリプトファンは、芳香族アミノ酸である。
▶ 分岐鎖アミノ酸(BCAA)…側鎖に枝分かれ構造を持つアミノ酸
バリン、ロイシン、イソロイシン
▶ 芳香族アミノ酸…側鎖に芳香族基を持つアミノ酸
フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン
× (2)βシートは、たんぱく質の三次構造である。
〔解説〕βシートは、たんぱく質の二次構造である。
下の「覚えよう!」を参考にしてください。
× (3)飽和脂肪酸は、分子内に炭素─炭素の二重結合をもつ。
〔解説〕飽和脂肪酸は、分子内に炭素−炭素の二重結合をもたない。
分子内に炭素−炭素の二重結合をもつのは不飽和脂肪酸である。
脂肪酸は炭素原子が鎖状につながった構造を持ち、炭素−炭素の二重結合をもたないものを飽和脂肪酸、もつものを不飽和脂肪酸という。
不飽和脂肪酸は二重結合の数によって分類され、二重結合が一つのものを一価不飽和脂肪酸、二つ以上のものを多価不飽和脂肪酸という。
× (4)トリグリセリドは、複合脂質である。
〔解説〕トリグリセリドは、単純脂質である。
脂質は単純脂質、複合脂質、誘導脂質の3つに分類される。
▶ 単純脂質:アルコールと脂肪酸のエステル
例)モノアシルグリセロール、トリアシルグリセロールなど
▶ 複合脂質:単純脂質の他に、リンや糖などを含んでいる脂質
例)グリセロリン脂質(リン脂質)、スフィンゴ糖脂質(糖脂質)など
▶ 誘導脂質:単純脂質や複合脂質が加水分解してできた化合物のうち、有機溶媒に溶けやすいもの
例)脂肪酸、コレステロールなど
○ (5)アラキドン酸は、エイコサノイドの合成材料である。
〔解説〕アラキドン酸やエイコサペンタエン酸は、プロスタグランジンなどの生理活性物質をつくる原料になる。
エイコサノイドとは、炭素数20の脂肪酸(アラキドン酸、エイコサペンタエン酸)から合成される生理活性物質の総称で、プロスタグランジン(PG)、ロイコトリエン(LT)、トロンボキサン(TX)、プロスタサイクリン(PGI)などがある。
エイコサノイド | 生理作用 |
PGE2 | 炎症、痛み、抗潰瘍、発熱 |
PGF2α | 子宮筋収縮 |
PGI2 | 血管収縮、血小板凝集抑制 |
TXA2 | 血小板凝集 |
LTC4 | 気管支収縮 |
覚えよう!
たんぱく質の構造
たんぱく質は多数のα‐アミノ酸がペプチド結合によって結合したポリペプチドで、一次構造、二次構造、三次構造、四次構造をなしている。
構造 | 結合の種類 | 分子の形態 |
---|
一次構造 | 共有結合 | アミノ酸配列 |
二次構造 | 水素結合 | らせん状のαヘリックス、シート状のβシート(β構造)の立体的な構造 |
三次構造 | 水素結合 疎水結合 イオン結合 ジスルフィド結合 | 二次構造が複数折りたたまれた立体的な構造 |
四次構造 | (サブユニット間の結合) 水素結合 イオン疎水結合 | 複数のポリペプチド鎖が集合した構造 |