消化の3段階と消化に関わる消化管ホルモンの役割【独学用 管理栄養士による栄養学解説】

独学

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食べ物にはいろいろな栄養素が含まれており、どの栄養素も効率よく吸収したいものです。

その食べ物から栄養素を吸収するために、胃や腸など身体のいろいろなところが連携して食べ物を消化します。

 

消化を行う胃や腸の働きを学ぶ前に、

消化の流れや、消化に関わる消化管ホルモンという物質など、消化を学ぶ上の前提となる事項をおさえておきましょう。

 

ここでは消化の3段階と消化に関わる消化管ホルモンの役割について解説します。

 

 

消化は「脳相」、「胃相」、「腸相」の3段階で行われる

 

消化は、食事を摂ってから腸で栄養素が吸収されるまでの間に「脳相」、「胃相」、「腸相」の3つの段階に分かれて行われます。 

 

  1. 脳相・・・食事の味や香りなどを感じると脳に伝えられ、胃や膵臓から消化液が分泌される
  2. 胃相・・・食道から胃に食塊が入ると、袋状の胃が広がります。この胃が動いたことをきっかけに消化液が分泌されます。
  3. 腸相・・・胃から食塊が十二指腸に送られると、その情報が各臓器に送られて十二指腸で用いる消火液が分泌されます。

以下具体的に解説します。

 

Ⅰ脳相

食べ物を消化する最初の段階では、脳から消化を開始する号令が送られ、消化液を分泌して消化の準備を行います

 

食事を摂る時に感じる味や香りなど、口や鼻の味覚嗅覚から食べ物の情報を受け脳へ送られます。

脳は受けとった情報から、胃や消化を助ける臓器である膵臓、胆のうに迷走神経を使って「食べ物が入ってくるので消化の準備を整えろ」という指示を送ります。

 

指示を受けた胃は食塊を消化する消化液の胃酸やペプシンなどを分泌します。

また胆のうや膵臓も消化液を分泌し、食塊の消化準備が行われます。

 

Ⅱ胃相

脳相の段階で、胃では消化の準備が行われています。その後咀嚼、嚥下によって食塊が胃に送られます。

胃に食塊が届くと、食塊を貯めるために袋状の胃が大きく伸展します。

胃が伸展した情報は「胃に食塊が届きました」という報告として脳に送られ、情報を受けとった脳は「消化の開始」を合図します。

 

消化の合図は迷走神経を通じて胃に送られ、胃酸やペプシンが分泌され消化が行われます

また、ガストリンという消化管ホルモンが分泌され、胃酸をより分泌するよう促し消化を助けます。

消化の合図は膵臓や胆のうにも送られ、それぞれが消化液を分泌し消化を助けます

 

Ⅲ腸相

胃である程度消化された食塊は小腸の十二指腸へ送られます。

十二指腸に食塊が届くと、コレシストキニンやセクレチンという消化管ホルモンが分泌され、本格的な消化が行われます

 

コレシストキニンは食塊が十二指腸に届いたことを合図に膵臓や胆のうに作用し、消化液の分泌を促します。

 

一方で、セクレチンは胃で分泌されて食塊に混ざっている胃酸が十二指腸に届いたことを合図に胃酸の分泌をおこなっているガストリンの分泌を止めます

胃酸は強い酸性で食塊を分解するため、不必要に酸性の胃酸が消化管を傷つけないようにするためです。

     

 

消化管ホルモンの役割と消化に関わる消化管ホルモン

 

胃相、腸相の解説で消化管ホルモンという言葉が出てきました。

 

消化管ホルモンとは、消化管の働く動きの度合いを調整することや、消化液を分泌させて消化を助ける生理活性物質です。

食べ物の消化を裏から支える役割で、消化には消化管ホルモンの働きが欠かせません。

 

消化管ホルモンとは、名前の通り胃や小腸などの消化管で産生されます。

 

いつも消化管ホルモンが出ているわけではなく、「食べ物を摂る」という食事そのものが刺激となって分泌されます

分泌された消化管ホルモンは血管を通って、他の消化管や膵臓などの臓器に働きかけ、消化液を分泌させたり消化管の運動を調節したりします。

 

これまでに数十種類のものが発見されていますが、栄養学的に重要な役割を担う消化管ホルモンを紹介します。

 

(1)ガストリン

ガストリンは消化を促進する消化管ホルモンです。

主に胃酸やたんぱく質を分解するペプシン、膵臓から分泌する消化液の膵液や酵素などの分泌を促します

また、胃や腸の動きを高めて消化を進めたり、胆のうを動かして消化液である胆汁を分泌させたりと、消化を進める代表的な物質です。

 

なお、ガストリンは消化の段階のうち、胃相になると胃粘膜前庭部という胃の部分にあるG細胞から分泌されます。

 

(2)コレシストキニン

コレシストキニンも消化を促進する消化管ホルモンです。

主に膵臓や胆のうからの消化液を分泌させて消化を助けます

 

また、迷走神経を通じて消化を開始していること、つまり今の時点で追加の食事は不要で満腹となっていることを脳に伝える働きもあります。

これにより消化が間に合わなくなるほどの過剰な摂食を抑えています

 

なお、コレシストキニンは消化の段階のうち、腸相になると小腸のI 細胞から分泌されます。

 

(3)セクレチン

セクレチンも消化を促進する消化管ホルモンです。

膵臓に働きかけて、膵臓から消化液を分泌させて十二指腸での消化を促します

 

また、セクレチンには胃酸の分泌を止める役割もあります。

セクレチンはガストリンの分泌を抑える働きがあり、引いては胃酸の分泌を止めるよう作用します。

 

なお、セクレチンは消化の段階のうち、腸相になると小腸のS細胞から分泌されます。

 

(4)GIP

GIP(gastric inhibitory polypeptide)はインクレチンという消化管ホルモンのひとつです。

インクレチンはもともと血糖値(血液中の糖質の濃度)を下げるインスリンというホルモンの分泌を促す役割を担っています。

  

GIPもインクレチンなので、インスリンを分泌させて血糖値を下げる作用がありますが、

GIPはもうひとつの働きとして、食塊の消化を終了するために胃酸の分泌を止める作用を持っています。

 

これはGIPが血糖値を下げようとして、これ以上糖質を消化・吸収して血液中に糖質が入ってこない(血糖値が上らない)ようにするために、そもそもの消化を抑えようとしていると考えられています。

このためGIPは胃酸分泌抑制ペプチドとも呼ばれています。

 

 

【重要】消化管ホルモンの分泌調整システム「フィードバック」

 

身体には「フィードバック」という調整機構が備わっています。

例えば、ガストリンは消化を促すために胃酸を分泌させます。ただ、胃酸はとても強い酸性なので必要以上に胃酸が分泌されると、胃などを荒らしてしまい反って身体を傷つけてしまいます。

 

そのため、以下のようなガストリンの分泌を抑えるシステムが備わっています。

消化するためにガストリンが働き胃酸が分泌される

胃酸が増えることで胃の中が酸性になりはじめる

一定以上の酸性(pH2.0以下)になると、ガストリンの働きを抑える

胃酸の分泌が止まる

 

また、セクレチンの概要で紹介した通り、セクレチンがガストリンの分泌を抑えるシステムもあります。

胃で胃酸が分泌され消化が行われる

食塊と一緒に胃酸が十二指腸に送られる

これ以上胃酸が分泌されないように十二指腸からセクレチンが分泌される

セクレチンの働きでガストリンの分泌を抑える

胃酸の分泌が止まる

 

このように身体にはひとつの物質の働きが過剰にならないように他の物質で制御するシステムが備わっています。

この制御システムを「フィードバック」と呼びます。

 

フィードバックは身体の『恒常性』を保つ上で重要な鍵を握っています。

フィードバックは消化管ホルモンだけでなく、他のところでも出てくるシステムなので覚えておきましょう。

 

 

 

  

消化はいろいろな消化器と消化管ホルモンが連携して行われる

 

消化の3つの段階である「脳相」、「胃相」そして「腸相」を流れで見ていくと、いろいろな消化管や臓器が消化に携わっていることがわかります。

このように消化管と消化に関わる臓器をまとめて消化器といい、それぞれの消化器が各々の役割を果たすことで食べ物を効率よく消化しています

 

消化は、消化器がバラバラに働いて上手に消化できないことのないように、

脳相や胃相などで紹介したように、脳が司令塔となって消化器同士の連携をとり効率よく消化を行っています。

その上、消化管ホルモンもそれぞれの消化器に働きかけることで、消化器同士の連携を助けています。

 

消化を学ぶときには、この消化器や消化管ホルモンの連携が複雑で理解しにくいかもしれないです。

そのため、まずは消化の3段階を学び、

それぞれの段階で「どの消化器」が働けるように「どの消化管ホルモン」が助けているのかをひとつずつ確認していきましょう。

 

ここまでの内容をおさえておくと、胃や小腸、膵臓などの消化器の働きを細かく勉強するときに理解が早くなりますので、しっかりとおさえておきましょう。

 

 

まとめ

○消化は「脳相」、「胃相」、「腸相」の3段階で行われる

○消化管ホルモンとは、消化管の働く動きの度合いを調整することや、消化液を分泌させて消化を助ける生理活性物質

○消化はいろいろな消化器と消化管ホルモンが連携して行われる

 

 

以上、消化の3段階と消化に関わる消化管ホルモンについて解説しました。

次回では胃の働きについて詳しく解説します。

 

(準備中)

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